【防災コラム⑨】断水時にトイレを流してはいけない?災害時の「排水管・下水道」の隠れたリスク

防災コラム 第9回/全12回
断水時にトイレを流してはいけない?災害時の「排水管・下水道」の隠れたリスク
地震や大雨の災害時、ニュースでは「断水」や「給水制限」が大きく取り上げられます。そのため、お風呂に水を張ったり、ペットボトルの水を備蓄したりするご家庭は多いです。
しかし、災害時に起こりがちな誤った行動があります。それは、「断水していても、バケツの水を使ってトイレを無理やり流してしまうこと」です。第7回(在宅避難)でも少し触れましたが、今回はその理由と対応策を詳しく解説します。
■ なぜバケツの水で流してはいけないのか?
地震の激しい揺れによって、地中の埋設排水管や下水管が破損・破断している可能性があります。また、大雨で下水管が増水し、満杯になっている場合もあります。管が破損している状態で、室内から水や排泄物を流してしまうと、以下のような事態に陥るおそれがあります。
排水の逆流
流した汚水の行き場がなくなり、下層階の便器や排水口から汚水があふれ出す。
床下・構造体への汚水漏れ
基礎内部や床下に汚水が漏れ出し、衛生環境が著しく悪化する。
なお、見落とされがちなのが、水道が復旧しても、下水道が使えるとは限らないという点です。過去の大地震でも、通水が再開された後に下水道の被害が確認され、使用の自粛が呼びかけられた事例があります。また、トイレだけでなく、入浴や洗濯、台所の排水も、下水道が安全と確認されるまでは控えることが推奨されています。
■ お引き渡し時に伝えたい「災害時のトイレの作法」
住宅のお引き渡し時やアフター訪問の際、設備の使い方とあわせて「防災上の注意点」をお伝えすることも、プロの大切な役割です。
「大地震の後は、自治体や、マンションであれば管理会社から『下水道の安全確認』のアナウンスが出るまで、水でトイレを流さず、必ず『非常用トイレ(凝固剤とポリ袋)』を使ってくださいね」
非常用トイレは、便器にポリ袋をかぶせて使い、凝固剤で固めた後に口を縛って保管するのが基本です。第7回でお伝えしたとおり、使用済みの袋を一時保管できる場所や、人数分×日数分の備蓄スペースの確保も、あわせてお客様と話し合っておくと安心です。
■ 新築の計画段階で配慮できる「排水まわりの備え」
1. 排水桝・排水経路の位置を、お客様と共有する
敷地内の排水桝(ます)や配管の経路を、図面とあわせてお渡ししておくと、災害後の点検や、業者への連絡がスムーズになります。
2. 地盤の動きに追従しやすい配管・継手の検討
地震時の地盤変位による配管の破断を抑えるため、可とう性のある継手の採用などを、敷地条件に応じて検討します。
3. 大雨時の逆流に備えた設備の検討
第6回でご紹介した逆流防止弁など、増水時に汚水が屋内へ逆流することを防ぐ設備も、低地や冠水履歴のある地域では有効です。
「大地震の後は、水でトイレを流さない」。このひと言のアドバイスが、災害後の深刻な衛生被害から、施主様の住まいと健康を守ることにつながります。
次回:防災コラム 第10回へ続く


