【防災コラム⑦】避難所に行かない「在宅避難」という選択:長期化する生活を支える間取りと備蓄スペース

防災コラム 第7回/全12回
避難所に行かない「在宅避難」という選択:長期化する生活を支える間取りと備蓄スペース
大規模災害が発生した際、指定避難所は、プライバシーの確保や衛生面、感染症のリスク、ペット連れの制限などの課題から、過酷な環境になりがちです。そのため、「自宅が無事であれば、避難所に行かずに自宅で生活を続ける『在宅避難』」が、避難行動の一つとして位置づけられています。国の防災基本計画でも、在宅避難者が発生することを想定した支援のあり方が示されています。
しかし、在宅避難を数日間〜数週間維持するためには、住宅側にそれ相応の「備え」が用意されている必要があります。
■ 大前提:在宅避難は「自宅が安全であること」が条件
在宅避難が成り立つのは、あくまで建物が倒壊や大きな損傷を免れ、かつ土砂災害や浸水のおそれがない場合です。土砂災害警戒区域や浸水想定区域にある住宅や、被害を受けて安全が確認できない建物では、無理に自宅にとどまらず、安全な場所へ避難する必要があります。これまでの回でお伝えした「耐震性能」(第2回)、「敷地ごとの局所的リスク」(第3回)、「内水氾濫対策」(第6回)は、在宅避難を選べる住まいであるための土台といえます。
■ 在宅避難を可能にする「住まいづくりのポイント」
1. ローリングストックを考慮した「パントリー・収納設計」
食料品や日用品、飲料水を日常的に使いながら備蓄する「ローリングストック」。これを無理なく実践するためには、キッチン横や玄関近くに、十分な奥行きと可動棚を備えた備蓄スペースが必要です。備蓄量は「最低3日分、できれば1週間分」が目安とされており、水は1人1日3リットルが基本です。重い飲料水は、取り出しやすい低い位置に収納できる計画が望ましいでしょう。
2. 「非常用トイレ」の保管場所と使用動線の確保
在宅避難で最も困るのが「トイレ」です。内閣府のガイドラインでは、トイレの使用回数は1人1日5回程度が目安とされており、4人家族で1週間分なら約140回分が必要になります。防臭袋付きの非常用トイレの備蓄箱と、使用後のゴミの一次保管場所(密閉して保管できるスペース)を計画しておく必要があります。なお、断水時は排水管の被害が確認できるまで、便器に水を流さないことも大切です。
3. 家族が集まるゾーンの安全性向上
リビングや寝室など、在宅避難中に長い時間を過ごす部屋には、頭上に倒れてくるような重い家具を置かない間取りを設計します。あわせて、第1回でお伝えした窓ガラスの飛散対策も、居場所の安全性を高める重要なポイントです。
4. 熱源と明かり、停電時の調理手段の確保
特にオール電化住宅では、停電時にIHクッキングヒーターが使えなくなります。カセットコンロとボンベの備蓄スペース、安全に使用できる換気のとれた場所をあらかじめ想定しておくと安心です。明かりや電源については、第4回の「非常用電源の動線設計」もあわせてご参照ください。
5. 生活用水の確保と、備蓄を分散させる工夫
断水が長引くと、飲料水だけでなくトイレや洗い物に使う生活用水も不足します。浴槽に水を溜めておく習慣のほか、エコキュートの貯湯タンク内の水を生活用水として取り出せる機種もあるため、仕様の確認と施主様への事前説明をおすすめします。また、備蓄を1か所に集中させると、家具の転倒などで取り出せなくなるおそれがあります。造り付け収納(第5回)の活用や、複数の場所への分散保管も有効です。
「頑丈な家を建てる」だけでなく、「災害が起きた後も、ストレスなく生活を継続できる間取り」を提案すること。これが、これからの時代の住まいづくりに求められる視点です。
次回:防災コラム 第8回へ続く


